
JR西日本の尼崎脱線事故からまもなく二年になろうとしている。
当初、JRは事故の主因に「ゆとりのないダイヤ」があったわけではないという考え方を示していたけれども、世論に押される形で、まずは事故のあった福知山線を・・
それからその年の秋に、他の大阪近郊各線のダイヤを見なおし、余裕時分の再設定、停車時間の延長などを実施してきた。
この間、それでは車両が足らなくなるので、余裕時分を生み出すための新車80両も建造している。
関西はかつて「私鉄王国」と言われた。
近鉄、阪急、南海、京阪、阪神の大手5社と山陽、神戸、能勢といった準大手と呼ばれる中堅鉄道とが路線をめぐらし、国鉄の利用客は私鉄のそれに遠く及ばなかったのだ。
JR化前から私鉄への攻勢を強めていた国鉄はJR化後はより積極的な攻撃に移っていく。
車両の更新、軌道の強化、新線の建設などと合わせて大幅なスピードアップを実現・・
日本の通勤鉄道としては始めて最高速度130キロの通勤列車を走らせ、あるいは、これまでは考えられないような所要時間で突っ走る快速列車を各線に走らせたりした。
本来、列車のダイヤを作成するにあたって必要な「余裕時分」は基本的にゼロとなり、停車時間が削られた駅では定時ダイヤを守ろうとする車掌や駅員が、乗客を急がせるアナウンスを響かせるようになった。
民鉄各社はJRの積極攻勢とモータリゼーションの進化で、乗客を減らしはしたけれども、一部を除き、だからと言って、JRと同じように余裕をなくしたダイヤを実施しようとはしなかった。
結果があの事故だ。
JRは大きく信用を失い、かといって私鉄もまた高速運転への批判的な視線が気になり、折角完成した高速化のための設備投資も使わない状況になってしまった。
本来、鉄道ダイヤに余裕は必要である。
ある会社のダイヤ担当者に聞いたところ、ダイヤ上の最高速度は認可速度マイナス5キロ、運転曲線で得られる計算上の駅間所要時間に数秒から数十秒プラスしたものが実際のダイヤとされているとのこと。
これに対し、事故前のJR西日本はダイヤ上の最高速度は認可速度そのもの、なおかつ、認可速度を超えても誤差を見込んで車両の設定をしているため、ある程度まではスピード違反も常態化していた。
また、駅の停車時間は15秒・・これでは、ダイヤの遅れなど取り戻せるわけがなく、それなのに、遅れが多い運転士や車掌を「教育」と称して罰するのだから運転する側もおかしくなって当たり前だ。
さて、3月18日、JR西日本はダイヤ改正を実施・・
事故後、設けていた余裕を更に拡大したダイヤとなった。
その結果・・JR西日本の看板列車のひとつである「新快速電車」の定時運行率が6割程度だったものが9割にまで向上したと・・これはJR西日本自身がホームページで正直に書いている。
都市近郊列車の定時運行率6割などと言うと、ここは本当に鉄道ダイヤの正確さを世界に誇った日本かと・・思うほどだが、これが一般的な数値になった(これでも私鉄各社よりは低いとは思うが)わけで、そう言う意味ではようやく真っ当なダイヤを作り始めたと言うところだろうか。
しかし、最高速度に対する運転曲線は未だに認可速度のままで、駅の停車時間で遅れを吸収しているのが現実だろう。
大阪から姫路まで新快速は事故前は57分で走破していた。
それは今は62分程度かかるようになった。
平行する阪神電鉄、山陽電鉄の直通特急は運転本数こそJRとほぼ拮抗するが、所要時間は90分、これでも最高速度110キロ、表定速度(停車時間を含めた平均速度)は60キロ代に達する。
僕として、これ以上列車の速度を下げろとは思えない。
けれども、私鉄側が現在の運転をするその前に「連続誘導式ATS」を完備したいたことをも考え合わせると、やはり、目には見えない投資なれど、安全への投資を先行することに大きな意義があったのではないかとも思うのだ。
昨年秋に、阪急神戸線が半世紀ぶりにスピードアップを行った。
じっくりと軌道や信号、車両などの改良を重ねてきた結果だ。
スピードアップは最高速度で僅かに5キロ、所要時間で大阪・神戸間2分にとどまるけれども、こう言う慎重さが企業としての理念に必要なのではないだろうか。
経営戦略と称し、目に見える部分だけへの投資を進めるならば結局はまた、同じことをしてしまうのではないだろうか。
byこう@電車おやじ

