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高岡蒼甫、韓流と嫌韓の狭間に沈む
高岡蒼甫がTwitterで韓流漬けのフジテレビを批判し、事務所を実質解雇された。
所属事務所のスターダストはフジテレビと親密だから、トラの尾を踏んだ形である。

高岡の不幸は、韓流と嫌韓の二項対立に巻き込まれてしまったことだ。
少なくとも当初、高岡は韓流や韓国を批判したわけではなかった。
あくまで、韓流コンテンツへの依存を批判したのである。
だが嫌韓と一緒にされた上、一部で人種差別主義者の烙印を押されてしまった。

高岡のツィートには、すぐにネット右翼が群がってきた。
そして、かの田母神元幕僚長までが賛同するに至った。
あっという間に政治化されてしまったのである。

窪津洋介は「GO!」で在日コリアンの役を演じた後、民族派へ変貌した。
高岡は「パッチギ!」で朝朝高級学校の番長役を演じて、注目された。
彼も窪塚と同じ道をたどるのだろうか。

この二人の共通点は不安定なところである。
だがそれは、役者としての可能性でもある。

芸能界には、不安定さを抱えたまま活動しているタレントが多い。
Kinki Kidsの堂本剛もその一人で、パニック障害を抱え、絶えず生き方を模索している。
スピリチュアルへの嗜好も強い。
北海道大学準教授の中島岳志は、「彼は非常に利口で繊細な若者だ」と言って、その彷徨を注視している。

高岡蒼甫の言動は、今の若者の「ある感覚」を代弁していると私は思う。
だから切って捨てることには賛成できない。
そういう無神経さが、ネット右翼を育てるのではないだろうか。

Twitterにおけるリベラル派の発言は、多くが上から目線だった。
こういう態度が一番良くない。
知的な上から目線ほど、彼らを激昂させるものはない。
中には知的レベルを揶揄するような批判もあった。

そういう態度は傲慢である。
それに彼の言っていることは、それほど的をはずしていない。

彼は東日本大震災に大きなショックを受けたと、ブログに書いている。
日本の現状に危機感を持ち、将来を危惧しているのである。
グローバル経済で日本が傷ついていると感じている。
そういう心情を笑っていいのだろうか。

私は自他共に認める韓流ファンである。
韓流が来るずっと前から、韓国の大衆文化に接してきた。
本まで書いてしまったぐらいだ。
そんな私から見ても、今の韓流ビジネスには疑問が多い。

テレビがひっきりなしに韓国ドラマを流すのは、自前で制作するより簡単だからだろう。
視聴率も取れる。それに加えてKpopの大ブームが来たことが、韓流に席巻されているという印象をもたらしている。

しかも売り出し方が怪しい。
「少女時代」がまだほとんど無名だった昨年夏、初来日の様子をNHKのニュースウォッチ9がトップニュースとして流したのである。
いくら何でもこれはおかしい。

そこでNHKと電通の共謀説が囁かれたわけだ。
それに最近になって、大手コンビニが全てKpopアイドルと提携した。
CMも流れている。
そういうビジネスモデルがつくられたことは一目瞭然だ。

だがどんなブームも、たいては仕掛けられたものだ。
魅力が無ければ受け入れられない。
韓流には人を惹き付ける魅力があったから、受け入れられたのである。

韓流コンテンツの強みは、韓国が近代化の最終段階にあるということではないか。
勢いが違うし、若者も必死だ。
芸能人として成功することが、重要な出世コースになっているのだろう。
彼らはプロフェッショナルだ。

社会は近代化の最終段階に差し掛かった時、一番輝く。
今まで日本式しかなかった西洋文化の受容と創造に、韓国式が誕生したのだ。
選択と集中という戦略も成功している。
次の段階に進めずに右往左往している日本とは違う。

だから韓国ドラマはわかりやすい。
地域全体が経済発展に向かっている今のアジアに、ちょうどいいのである。
そういう意味で、アジアのスタンダードになれる位置にいる。

それに韓国の音楽業界は今、日本でいう小室時代だ。
今まで培ってきたもの全てが開花する、収穫期なのである。
韓国映画は少し前にその時期が終わり、難しい段階に入っている。

だがアイドルグループの大成功は、韓国社会に様々な波紋を広げている。
一番の問題は外見至上主義と、消費文化の低年齢化だ。
中学生までが「少女時代」のようなメークを始めて、教育現場を困惑させている。
親や教師がいくら注意しても聞かない。

日本でもSPEEDのデビュー以後、小学生までが消費市場に参加。
渋谷109に買い物に来て、成人男性に監禁されるという事件が起きた。
こういう社会は一度幕を開けたら後戻りできない。

Kpopの成功はそんな危うさも孕んでいる。
だが人口5千万の韓国は、国内市場だけではやっていけない。
結果として、怒濤のように押し寄せてくることになる。

一方、韓国が上手にコンテンツをつくるのなら、もはや任せてこっちは楽しむだけでいいではないかという考えも成り立つ。
外注である。だが、大衆文化は社会の活力と密接に結びついていると私は思う。
コンテンツづくりを止めたら、活力も低下してしまう。

自国の大衆文化を意識的に振興するのは、排外主義ではない。
エンターテインメントは農林水産業と同じで、グローバルビジネス一辺倒では何かが消えてしまうのである。ジーンズの海外生産とは違うのだ。

例えば宇多田ヒカルは、母親譲りの演歌的感性と震える声が、独特の魅力を放っていた。
早過ぎるデビューによって消耗し、活動停止に追い込まれたのが惜しまれる。
無常観が魅力だった浜崎あゆみは、Avexを支え続けてボロボロになった。
そのAvexはBEASTと共同レーベルを立ち上げた。

いつも、今成っている実を刈り取るだけ。
Kpopブームの波が引けば倒産するだろう。

それに、何だかんだ言ってもまだCDが売れる日本市場は貴重だ。
日本人が心から共感できるミュージシャンを育てていくことも、必要ではないか。
その努力もせずにKpopに依存するのでは情けない。
高岡蒼甫は、そういう仕組みを批判したのである。
日韓のエンタメ界は双方とも、人の褌で相撲をとっている。

また韓流ファンとして、私にはKpopブームに対して言いたいこともある。
韓国の良き伝統との繋がりが、全く感じられないことだ。
知り合いの韓国人も「空虚だ」と批判している。
ビジネスが上手であることは認めるが、それだけでいいのか。
もっと堅実に、国内市場も大事にするべきではないか。

フジテレビも、最初は意欲的に合作ドラマを製作していたのである。
ウォンビンと深田恭子が共演した「フレンズ」は、記念碑的な作品だった。
だが、その志も今は昔。ただ安易に依存しているだけだ。

「国境なんかいらない」「国民の物語は全て幻想だ」「日本は一度どん底に落ちればいい」
リベラル派はずっとこう言い続けてきた。
だが、文字通りどん底に落ちた日本社会を見ても、平気でいられるのだろうか。

いまグローバル経済は強者の論理となって、日本人を圧迫している。
それに敏感に反応している若者は少なくない。
完全に国境を越えられる人間は少数だ。
私もまた、汚染列島にへばりついて生きていくしかない日本人の一人だ。
だから高岡蒼甫の叫びは、私にとって他人事ではなかった。

それにしても、韓流ビジネスが成功によって、圧力をかけたようにも見える側にまわるとは予想外だった。「韓国映画なんか観ているの?」と小馬鹿にされていた頃を思うと、私は複雑な心境である。
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