Make Your Peace

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品川駅前に広がる「マトリックス」的光景

 私は先日、初めて再開発された品川駅前を見た。インターシティーができた港南口だ。いやぁ驚いたの何のって! まるで、映画「マトリックス」のような光景が広がっているのである。夜空を背景に高層ビルが林立。コンコースは天井が高く、あえて明るさを落としたシックな雰囲気。その下を、黒い服を来た人々の群れが歩きつづけるのである。

 高層ビル群と言えば、新宿西口がはしりだ。しかし、あの高層ビル街ができた頃は、まだそこは特別な非日常的空間だった。人々は驚きとまどい、居心地が悪そうにしていたものだ。しかし今や日本人は、そういう空間が似合うようになった。近未来的光景がどんどん広がり、日常の中に入ってきている。

 私は夜の渋谷ハチ公前交差点に立つ度に、こういう世界が現実になったことに驚嘆している。大小四つの液晶画面から、ひっきりなしに映像と音楽が降り注ぐ。人々はそれを当たり前のように浴びながら、ざわざわと歩きまわるのである。私はそれを見て、いつも映画「ブレ−ドランナー」を思い出す。あの映画が公開されてから二十年で、街の風景はすっかりSF的になった。

 こういう風景には、過剰な感情や表情は似合わない。システムに適応できるスマ−トな人間の方が似合う。一番似合わないのは恐らく、主張する人間である。一方で、発展から取り残された地域は荒廃していくのではないだろうか。高層ビルには、自分さえ良ければいいという発想が感じられる。今後、高層ビル化とスラム化とが併存していく可能性がある。

 それにしても、建築の思想は今どうなっているのだろう。私は以前、「デザイナーは具体的世界の護民官」という一文を読んで、目から鱗が落ちる思いがした。以後、デザインに関心を持つようになった。

 高層ビルの思想は上昇志向と威圧だ。周囲に溶け込むという発想は最初からない。地域文化の破壊が前提になっているのだ。都市にはそういう場所があってもいいのだろうが、それがどんどん拡大している。そしてどの街も似たり寄ったり。画一的とはこのことである。今、多様性はあらゆる意味で危機に瀕しているのではなかろうか。

 

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