日本人全体を見れば、愛国心を口に出さないけれど、愛国心そのものは強い人が多いと思う。私の父は新聞で日本の新技術とかそういう記事を見つけ出す と、喜 々として1時間はそれについて語る。特許貿易で日本はアメリカに対して大幅赤字なんだけど、それでも日本が世界一だと思っている様子。
父が読んでいるのは朝日新聞。国家体制に批判的な朝日新聞も、国家実体 ― 国民 ― についてはものすごく愛国的だ。
で、そういう父を私はちょっと馬鹿にしてたんだけど、あるときNHK特集でカシオの工場がフレクストロニクスに買収されたことを知った。カシオの工場に技術指導に来たのはブラジル人。
もの作りの現場で、日本人はブラジル人に追い抜かれていたんだよ!
青天の霹靂 ― だったよ、あれは。しばし呆然としてた。それまで、特許では負けても、もの作りじゃ日本は負けない、と思ってた。神国日本への旧日本軍末端兵士の信仰と、日本のもの作りへの私の信仰に、大差はなかった。
それからいろいろ調べていくと、液晶テレビで日本は中国に抜かれているし、ブランドバリューで日本のソニーが韓国のサムソンに負けてるし、アメリカのチェイニー副大統領の血管には中国製のステントが入っている。
『プロジェクトX』を見てたら、戦後復興期の日本人は「日本はドイツに負けてる」とか「日本はアメリカに負けてる」とか思って、ミシンとか自動車とか開発してた。バブル以降の日本人とは全然違う。
「日本のここがダメだから改善しよう」という発想につながる愛国心なら大いに歓迎すべきなんだけど、今政府が音頭を取っている愛国心教育にはそういうところが見受けられない。
不健康なところをお化粧で誤魔化すにも、鏡を見る必要はある。



